黙秘します——黙秘で不利になることは一切ない

捕まったとき、あなたは何を言うべきか。あるいは——何を言わないべきか。

これは犯罪を奨励する話ではない。権利を知っているかどうかが、人生を分けることがあるという話。

「黙秘権」とは、自分に不利な供述を強要されない権利のことだ。日本国憲法第38条に明記された、最も基本的な権利のひとつである。しかしこの権利は、知っているだけでは意味がない。実際に行使できるかどうかが、すべてを決める。

黙秘——口を封じる法の象徴

「喋ったほうが得」は本当か

取調室で最もよく使われる言葉がある——「正直に話したほうが、あなたのためになる」。

これは事実ではない。少なくとも、あなたにとっての事実ではない。捜査機関の目的は有罪を立証することであり、取調官はその目的のためにあなたと話している。自白や供述は、あなたを「助ける」ために使われるのではなく、起訴・有罪判決の証拠として使われる。

FACT / 日本の刑事手続きにおける現実

日本の刑事裁判における有罪率は99%を超える。これは、起訴された案件のほぼすべてが有罪判決を受けることを意味する。裁判に持ち込まれた時点で、捜査機関はすでに十分な証拠を積み上げている——そのほとんどは、被疑者自身の「供述」によって補強されている。

黙秘権とは何か——憲法が保障するもの

日本国憲法 第38条

何人も、自己に不利益な供述を強要されない。

強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

つまり、あなたには一切しゃべらない権利がある。名前も、住所も、その日何をしていたかも。「黙秘します」——たったこの一言だけで、法的には十分だ。

取調べを拒否することはできないが、供述を拒否することはできる。この違いを理解しておくことが重要だ。

「黙っていると不利になる」という嘘

現場でよく聞かれる言葉に、「黙秘すれば証拠隠滅を疑われる」「態度が悪いと思われる」「裁判官の心証が悪くなる」というものがある。

これらはすべて、供述を引き出すための心理的圧力だ。日本の法律において、黙秘権の行使それ自体を不利益な証拠として扱うことは許されない。黙っていること自体が「罪の証拠」にはならない——少なくとも、制度上は。

もちろん現実の運用には歪みがある。だからこそ、弁護士を呼ぶことが最初の一手になる。

逮捕されたら、まず何をするか

どんな状況であれ、逮捕された直後にすべきことは三つだけだ。

一、「弁護士を呼んでください」と言う。
これは権利だ。断られる理由はない。

二、「黙秘します」と言う。
それ以外のことは言わない。名前すら言わなくてよい。

三、この二つ以外は、何も言わない。
「少しだけ話す」が最も危険だ。どこまでが「少し」かは、あなたには制御できない。

弁護士が来るまでの間、取調官がどれだけ話しかけてきても、どれだけ優しくされても、それはすべて供述を引き出すための手続きだと思え。

「仁義」としての黙秘

前の記事でスニッチについて書いた。スニッチの対極にあるのが、この黙秘だ。

法的な権利として黙秘があるように、ストリートのコードとして「喋らない」がある。どちらも本質は同じだ——自分以外の誰かを、自分の口で売らないこと。

取調室でのプレッシャーは、想像を絶するものがある。長期勾留、孤立、睡眠を削られる尋問——制度の中で人はいとも簡単に折れる。だから「黙秘する」という覚悟は、頭の中でだけ持っていても意味がない。習慣として、文化として、仁義の一部として内面化されている必要がある。

中に入っている人間が手紙を書いてくることがある。「あいつが喋った」「あいつは黙っていてくれた」——その話をするとき、彼らの声のトーンは決定的に違う。言葉は、実際に経験した者だけが知る重みを持っている。

※ この記事は法律の専門的アドバイスではありません。
実際に逮捕・拘留されている場合、または逮捕の可能性がある場合は、速やかに弁護士に相談してください。当番弁護士制度(弁護士会に電話すれば無料で来てもらえる)を活用することを強くすすめます。

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